HOBBY THE TOMY

M4A1

M4A1というライフル

ホビーラジコンとトイラジコンM4A1はUSミリタリーのプライマリーウェポンとして制式採用されているアサルトライフルだ。
1990年代、M16シリーズの大きな特徴だったキャリングハンドルを無くし、代わりにピカティニーレールを装備したフラットトップ仕様へと転換。ライフルスコープやダットサイト、ナイトビジョンやサーマルビジョンなどの各種照準器システムを容易に装備できるようになった。
これによりヴェトナム戦争時代にルーツを持つ戦闘銃の、現代戦への対応力が一気に高まった。

フラットトップ化という画期的な進化に、細部の改良を加え「M4/M4A1」として制式採用となったのは1994年といわれている。すでに20年以上経過しているが、今もなお現場の意見を元に改良を重ね、M4には数多くの試作モデルや異なるバージョンが存在する。新型銃が登場するたびに「いよいよ世代交代か」という噂が出るものの、M4への信頼性はまだまだ揺るぎないどころか、強まる一方だ。
オリジナルのコルト社の他にも、ナイツ社やアーマライト社、HK社などメーカー違いのM4タイプが色々な部隊で部分的に採用されている。つまり、時代ごとに変化する戦闘状況に合わせ、器用に実用性を高めながら進化を遂げている。ニーズに合わせて進化できると言っても良いほど、変幻自在な機能性。その余地を残していた事が素晴らしい。恐らく、設計当初はこのような展開は考えていなかったはずだが、良い意味で未完成だったため、性能が追求できたのだろう。
例えばアッパーレシーバーとロアレシーバーの分割。銃身とボルトという発射に直接関わる上半身部分と、撃発機構とグリップ&ストックの下半身。銃身長が異なるアッパーに手軽に交換できるなど、手を加えられる、または新たなアイデアを盛り込める自由度があり、かつ作りやすい素材と構造だった事が幸いしたのだった。

先述の通り、M4は細かい改良と進化を繰り返して現在に至っている。その様子が最も顕著なパートの1つがレイルシステムだろう。
フラットトップだけでなくフォアエンド部にもピカティニーレールを設け、ライトやレーザーサイト、バイポッドなどの各種アクセサリーを自在に装備できる事で、M4システムの汎用性を飛躍的に高めたレイルシステム。レイルシステムはM4進化の立役者だ。
ナイツ社のR.I.S.(レイル・インターフェイス・システム)がM4に制式採用品として揺るぎない存在感をもって現在に至っている。各社からも構造や固定法など、コンセプトを変えたレイルシステムが次々に登場。携帯しやすく、かつ頑強なシステムを追求すべく、当初は銃身の上下左右4面すべてにピカティニーレールが配され、太くガッチリしたタイプが多くあったが、最近は逆に細くスッキリしたタイプが人気だ。フロントレイルに装備するアイテムと位置がほぼ決定され、必要な部分だけにレイルわ装着できるよう変化したためだ。
また画期的だったのはアッパーレシーバーとレイルが一体成形されたモノリスィックレイルだ。レイル自体が頑強になるだけでなく、新たな可能性わ示したものだった。

クローンM4の台頭

レイルシステムだけでなく、M4本体も数多くのメーカーで生産され、各社素材やパーツ形状を工夫し、よりタフで高精度なM4モデルが生産されるようになった。コルト以外で製造されるM4タイプをM4クローンと総称することがある。同時にM4のショートストロークピストン化が課題になっていた。
M4の特徴的なシステムに「発射ガス直接噴射によるボルトロックの解除」がある。クリーンな撃発システムとして考案されたが、実際はカーボンなど発射ガスに含まれる汚れにより、作動不良を起こす要因となっている。いわばM4のアキレス腱とも言える部分だ。この問題を解消すべくM4のピストンロッド化が求められた。
しかしながら、一方でピストン式は命中精度に悪影響を与えるとする考えもある。発射ガスでピストンが作動する際に、わずかだが銃身をたわませる方向に負荷がかかるため、より良い命中精度を求めるならガス直噴タイプの方が優れているとする説があるのだ。しかし、それは100、200、300m先という遠距離、それも競技会で僅差を競い合う場合の話し。実際の戦場では、わずかな命中精度の違いより、確実に弾が発射される事が優先されるべきファクターではないだろうか。

新たな機能性と弾の進化

M4の機能性の追求は止まらない。命中精度や耐久性だけでなく、反動を軽減する事も総合的な扱いやすさを高めることになる。発射時の高圧ガスを吹き付けることで、反動を抑制するのがコンペンセイターの効果。さらにボルトが前後作動するときの反動も軽減することで、劇的にブレを少なくするなど、新たなコンセプトで低リコイルショックを実現するアイデアが登場。
さらに、M4本体だけでなく、新型カートリッジにも注目したい。M4に使用する.223(5.56mm)NATO弾はパワー不足が囁かれており、6.8mm弾など、これまでも新カートリッジが開発されてきた。現在もっとも有力視されているのが.300ブラックアウト弾だ。.300口径、つまり7.62mmの弾丸を.223用のカートリッジに収めたようなもの。AK弾を小型化したような印象で、ストッピングパワーに優れ効果的と言われている。また、初速が亜音速なため、サプレッサーとの相性も良いと評判。銃身を交換するだけで、現行のM4がそのまま使用可能なのだ。

なぜ、M4がこれだけ発展できたのだろうか?
ひとえに「数多くのM4があった」ということに他ならないだろう。制式採用銃としてM4カスタムのベース、つまり改良型M4の元になる銃が巷にたくさんあり、個人や会社などのグループに関わらず、多くの事が試された事はラッキーだった。
射撃競技会で用いられる事で、命中精度や耐久性が鍛えられる。そもそも、キャリングハンドルの代わりにピカティニーレールを装備するフラットトップも、民間の射撃競技会から生まれたコンセプト。M4進化の源は民間の自由競争にあったと言っても過言ではないだろう。民間でアイデアが練り上げられ、優秀な品がミリタリーで採用されていく。アメリカではその道筋とシステムが確定されていたからこそ、最前線の新たなニーズに合わせ、微細に対応し自由に変化できる。M4の進化は止まらない。


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