HOBBY THE TOMY

東京マルイ トイガンの歴史・1980-1991

1980's 低価格なのに驚くべきパフォーマンス

トイガンファンが東京マルイという社名を意識しだしたのは1980年代に入ってからだろう。
それまでも数社がモデルガンより低価格な1/1のプラモデル銃を製造販売していたが、東京マルイはリボルバーが中心だった「造るモデルガン」シリーズに、キャップ火薬でブローバック作動が可能なワルサーP38を加えたのだ。
当時ブローバック・モデルガンは安くても7,000~8,000円した中で、マルイP38はなんと2,900円だった。その技術力、そして価格に見合わぬパフォーマンスに、まさしくみんな度肝を抜かれた。
次に東京マルイが脚光を浴びたのは1985年。いま現在でも連綿とシリーズの流れが絶えず続くエアーコッキング・ハンドガンシリーズの第一弾、ルガーP08の登場だ。1,900円という売価は当時でも驚きの安さだったが、それ以上にファンが驚嘆したのはその命中精度だった。ハンドガンなのでピストンの容量などタカが知れているし、内蔵のバネも短い。にも関わらず距離5mで3cm程度のグルーピングを叩き出す個体がいくつも見つかった。
80年代半ばにして東京マルイはすでに、エアソフトガンの命中精度に関するノウハウをすっかり構築していたとしか思えない。そのノウハウを投入して作られたM16やG3といったライフルやワルサーMPL&MPK、さらにMP-5やUZIといったSMGも、ファンからは高く評価されていた。

1990-1991 電動ガンの発売

しかし、当時すでに一大ブームになっていたサバイバルゲームに於いて、戦いを有利に進める上でモノを言ったのは「BB弾の飛距離と命中精度」以上に「装弾数」と「連射性能」だった。
手動式コッキングガンが中心だった当時の東京マルイ製品は、一目置かれてはいたものの遊びの中心にはならないガンたちと見なされていた。
80年代後半のサバイバルゲームでは、BV式と呼ばれるエアーまたはガス式フルオートが主流だった。ゲーマーたちは10~12Lの容量、7~8kgもの重量がある大型エアタンクを背負って野山を走り回っていた。銃はそのタンクから伸びたホースの先に繋がれていたのである。これは実に煩わしいことだった。そんなストレスからサバイバルゲーマーたちを解放したのがオートマチック電動ガンだ。1991年4月26日、東京マルイ電動ガンの第一号モデル、FA-MAS 5.56-F1が全国のホビーショップ、玩具店で一斉発売となる。基本原理はスプリング式のエアーガン。それをハイトルクのモーターで駆動し、フルオートもセミオートも可能。従ってバッテリー以外のパワーソースは不要であり、BB弾発射に関与するのは銃本体だけ。今でこそ当たり前のそのコンセプトが、当時はあまりにも画期的だった。
東京マルイが斬新だったところは、安易にガスや外部エアー式に切り替えず、スプリングエアー式の利点を活かす方向で、バネを押し縮める手の代わりとなるモーターとギアの仕組み、すなわち「メカボックス」を開発したという事実だ。この大胆な発想は他にもキャラクターもののプラモデルやラジコンなど、幅広い玩具の分野で果敢な挑戦を繰り返していた同社らしいアプローチだった。
さらにマルイの先見性を物語るトピックとして、他のトイガンメーカーに先駆けてアフターサービス部を設置した事も挙げられる。それまでは、たとえ玩具であっても銃というものはユーザー自身で分解したり調整したりするのが当たり前、という考えが主流だった。しかし東京マルイは電動ガンに想定されるあらゆるトラブルを回避するための方策として、あたかも大手家電メーカーのような修理およびバックアップ体制を整えたのだ。

1992-1993 業界トップメーカーに

FA-MAS 5.56-F1から約1年後の92年3月には絶対的な人気モデル「コルトM16A1」、その半年後の秋冬には映画で人気急上昇中だった「H&K MP5A5」と「MP5A4」が、そして93年2月にはサバイバルゲーマーの大本命「XM177E2」が発売され、フィールドに設けられる電動ガンとBV式ガスガンの勢力図は完全に入り替わった。
ほぼ時を同じくして、東京マルイは斬新なアイデアを当たり前のことにする改革を次々と実現させている。
第一は連射マガジン。実銃アサルトライフルの装弾数は20~30発。電動ガンは通常マガジンで50~70発。東京マルイはそのさらに上を行く300連や200連などを銃本体と同時発売した。弾切れを気にせずホースから水を撒くようにBB弾をフルオートで撃ちまくれる快感と楽しさ、特に初心者ゲーマーにはこんなに心強いものはなかった。
93年7月には双璧をなす画期的なメカニズム、HOP-UPの標準装備も始まった。発射されるBB弾にバックスピンを与えて揚力を生み出し、パワーを上げなくとも飛距離を伸ばせるという仕組みだ。
東京マルイは使用するBB弾の種類や重量に合わせてセッティングを変えられる「可変HOP-UP」のメカニズムをFA-MAS スーパーバージョンに搭載。さらに以後発売される全ての電動ガンに標準装備。やがては機種やシリーズによって可変・固定の差こそあれ自社の全エアソフトガンにHOP-UPを搭載することになる。
他にも蓄光材を含んだBB弾を強く光らせて発射するフルオート トレーサー等、東京マルイは新機軸を次々と投入。90年代半ばには業界シェア80%超えを達成。名実ともにトップメーカーに躍り出た。

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